COLUMNS

コラム

TOPコラムホテルを運営する企業としてブランドへの誇りを醸成していくオフィス

JR西日本ヴィアイン様 本社移転プロジェクト

ホテルを運営する企業としてブランドへの誇りを醸成していくオフィス


企業のオフィス移転は、社員の働き方や会社との関係性を見つめ直す機会でもあります。 大阪を拠点に、全国でホテル事業を展開する「JR西日本ヴィアイン」では、本社オフィスを移転するにあたり、社員同士や部署間、社内外のコミュニケーションに重きを置いた空間づくりが行われました。                               

同社の新オフィスのインテリアは、通常の執務スペースの他、ホテルのロビーに着想を得たレセプションカウンターや、他の社員が働く空気感を柔らかく感じ取れる適度な距離感のフリースペースなどが特徴。今回、このオフィスを計画した目的や、完成した空間で生まれている新たな社内コミュニケーションについて、JR西日本ヴィアインのご担当にお話を伺うとともに、TOPPANとのプロジェクトについて振り返っていただきました。






柴﨑 紳一朗 様



入江 学 様



橋本 直樹


部署の垣根を超えたコミュニケーションを生む空間

Q. オフィス移転の目的について教えてください。

柴崎 様:

社員数が増え、以前のオフィスが使用人数に対してかなり狭くなっていたことがオフィス移転を計画したきっかけです。それまではオフィスビルの1フロアだけでなく、執務エリアやミーティングスペースが複数階に分かれていました。また、そもそも執務スペースもゆとりがなく、社内を移動しづらい状態であったため、物理的に部署間の連携が図りにくく、また誰がどこで仕事をしているかを把握するのにも苦労していました。
オフィス移転を計画するにあたり、デザインを指名コンペで複数社に提案してもらいました。それまでTOPPANさんがオフィスづくりを手掛けていることを知らなかったのですが、以前にホテル事業のコンペに参加いただいたつながりで、同社の環境デザイン事業部の仕事を知り、相談をしました。



JR西日本ヴィアイン 取締役 経営企画部長 兼 開発企画部長 (2025年3月現在) 柴﨑 紳一朗 様

デザインの与件として設定したのは、社員がゆとりを持って働ける広さを前提に、「複数人が気軽に集まって話せる場所」と「部署を超えてコミュニケーションが取りやすい空間」でした。私たちのホテル事業は、ブランディングに携わるPR部門、営業を手掛けるセールス部門、ホテルを運営するソフト部門、建築・設備に対応するハード部門など、多くのセクションで構成されています。そして、そのすべての連携力が試される業種です。オフィスで自分の仕事をしている間も、他の部署がどのように動いているかを感じ取ることができ、またちょっとしたことをすぐに相談できる環境づくりが、私たちのホテルのブランド強化につながると考えました。

L字型の区画において、壁を設けないひとつながりの空間構成とし、エントランスから見通せるラウンジと執務スペース、その奥にミーティングスペースを設けた。※図面は初期のもので、実際のレイアウトとは異なります

一方で、ホテル事業を通し、多くのお客様に笑顔になっていただくためのサービスを提供しているのに、運営側の私たちが眉間にシワを寄せて働いているのでは、良いサービスは生まれないという想いもありました。以前のオフィスから、すべての事柄を劇的には変えられないかもしれないけれど、クリエイティブな雰囲気を感じられるオフィス空間になってほしいとも考えました。

Q. TOPPANの提案を採用したポイントを教えてください。

入江 様:
私たちの目指すオフィスは、一般的にイメージされるような事務的な仕事場ではなく、人々が集い、思い思いに過ごし、話の輪が広がるような場でした。そのオフィスとホテルの中間にあるような空間の提案をしてくれたのが大きかったです。もちろん働きやすさは確保されていますが、働く私たちにとっての“遊びの余地”を感じる提案がうれしかったですね。コンペのプレゼンと並行して、私たちが新オフィスに何を求めているか、かなり入念にヒアリングしていただき、TOPPANさんの“伴走”するような姿勢から、その提案が生まれてきたのだろうと感じています。

JR西日本ヴィアイン 経営企画部 次長 (2025年3月現在) 入江 学 様

橋本:
我々の提案を採用いただいた後も、JR西日本ヴィアイン様がオフィスに対して抱えている課題を聞き、求められていることを掘り下げていきました。当社のライブオフィス兼ショールームである「expace office」で実際にどのような家具や空間が必要か、具体的に内容を詰めていくことができた点も良かったです。expace officeで当社の社員が会話している様子や、皆が本や資料を持ち寄ったライブラリースペースなどを見て、イメージを膨らませながらご提案をしていきました。

TOPPAN 生活・産業事業本部 環境デザイン事業部 第二営業本部 橋本直樹


お客様に寄り添った視点からオフィスの"空気感”をデザインする

Q. 完成したオフィスについて、特徴的なデザインを教えてください。

柴崎 様:
なんと言ってもまずは、オフィスに入ってすぐの場所にあるカウンターとラウンジですね。通常のオフィスのレセプションのようなつくりではなく、ホテルのロビーカウンターのスケールをもとに制作しています。ホテルの会社であることを視覚的に発信すると共に、社内の接客の研修やコンテストなどにも活用でき、その様子を執務エリアからも見ることができます。その側に設置した本が並ぶディスプレイテーブルは、『みんなの図書館』としてホテル雑誌やビジネス本を中心にディスプレイしています。

ホテルのロビーカウンターをもとにデザインしたラウンジ。同社の接客コンテストなど多目的に活用されている

入江 様:
カウンター前のベンチシートのあるラウンジは、社員が昼食をとる場所にもなっています。以前のオフィスでは、自分のデスクや外出して食事をしていましたが、人が集まってコミュニケーションを図りながら休憩している雰囲気もいいですね。
同じく多目的なエリアとして、執務室とミーティングルームの間に設けたフリースペースも、社内に新しい人の動きを生み出す場所になっています。中央にある駆体柱は、工事の前は邪魔な存在だと思っていましたが、その柱をタイルとグリーンで囲み、カウンターテーブルを設けることで、人が気軽に腰をかけ、会話や食事をするオフィスのマグネット的な機能を果たしています。

来客用エリアと社員のエリアを分けながらも、間仕切りをガラス張りにして、社内の雰囲気を外部にも感じさせるオープンなつくり

ミーティングルームは間仕切りをなくし、会議をしている様子が周囲にも伝わるようになっています。計画当初は、壁がないことを懸念する声もありましたが、そもそも社内の人間しかいない空間であり、またどの部署が何について話しているのかを、他部署の社員も知ることで、課題の解決やプロジェクト進行も円滑になっていくと期待しています。

可動式の家具を配したフリースペース。社員の作業や打ち合わせ、食事など、自由な使い方が生まれている

橋本:
オフィスの入り口側に設けた待合と応接を兼ねたスペースも特徴的です。ホテルのロビーのような、木調の素材に囲まれた落ち着いた空間に、TOPPANのディスプレイ製品である「ダブルビュー」が設置されています。木目調の壁面(化粧板)に映像が映し出され、オフィスエントランスとしての上質感と、来客に対する情報発信をできる空間として、印象的なインテリアです。「ダブルビュー」導入は、JR西日本ヴィアイン様から、グレードの高い内装デザインを見てみたいと要望を受けてご提案しました。そのデザインと製品を気に入っていただき、すぐに採用されました。お客様と一緒になってデザインを考えていったことで生まれた空間の一つであり、より積極的に私たちの提案を求め、受け入れていただいたからこそ実現した空間だと思います。

オフィスに足を踏み入れると最初に目に入る壁面には、TOPPANのディスプレイ製品「ダブルビュー」を採用。木目の自然な表現と、映像表示の両方の機能を発揮する

柴崎 様:
システムやセキュリティの関係で、完全にフリーアドレスにはできませんが、それでも社員が部署を超えていろいろな場所で、仕事や打合わせをしている様子を目にします。また、社内資料のペーパーレス化を目指し、キャビネットなどもできるだけ少なくするよう試みています。
これまでの働き方を一気に変えることはできませんが、この新しいオフィスから少しずつ変化が生まれてほしいと思っています。

執務スペースからミーティングスペースまで、仕切りのないオープンな空間で、他の社員の仕事ぶりを感じる

入江 様:
個人で時間管理し、フレックスで働くことへの意識が芽生えるよう、オフィス内の皆が見えるような時計は設置していません。以前は朝昼夜のチャイムで動いていましたが、今は自主的な行動が増えています。また、ゴミ箱の設置箇所を減らした事によって、社内を美しく保ちながら、オフィス内で人が動くきっかけも生み出しています。これにより、「◯◯さん、ちょっといいかな?」と気軽に声をかけて、その場で打合わせが始まるというシーンも増え、狙い通りコミュニケーション促進が図られています。

Q. 今回、TOPPANとのプロジェクトで感じたこと、また今後に期待することを教えてください。

柴崎 様:
社内各部署の壁がなくなったことだけでなく、オフィスエントランスの待合スペースから、ガラス張りで社員のラウンジや執務スペースの様子が見えるつくりによって、ホテルの仕事が、人からどう見られるかが大切であることを改めて感じる空間になったと思います。こういった、専門的な業種の空気感は、私たちもなかなか言葉で伝えづらいものです。TOPPANさんは、その言語化できない働き方改革のニーズを、同じ視点で汲み取ってくれる存在だと感じながら、一緒になってオフィスづくりに注力できました。



エントランスからガラス越しに見るラウンジは、ホテルを運営する企業であるJR西日本ヴィアインを象徴する場所になっている

入江 様:
自然なコミュニケーションが促進され、他の社員と程良い距離感で働ける環境によって、社内が優しい雰囲気になったと感じます。それと同時に、美しいインテリアの中で働くことで、自分たちの職場、仕事への誇りを感じられるようになっていると思います。機能性だけでなく、そこで生まれる「空気をデザインすること」は、単なる発注者と受注者という関係性ではなく、ある意味で対等な立場で、それぞれの想いをぶつけ合うことができたからこそ可能になったのではないでしょうか。このオフィスができたことで、ホテルの社員も立ち寄る機会が増え、また、ホテルのバックヤード空間を見直す必要性についても議論が生まれています。そういった細かなニーズを拾い上げながら、より価値のある働く場所を作り上げるパートナーとなってほしいですね。


橋本:
JR西日本ヴィアイン様がホテルづくりで掲げる「MY HOME HOTEL.」という想いを受け止めながら、まさに「MY HOME OFFICE」と言えるようなオフィスになったと思います。私たちは、お客様がベストな選択をできるよう、様々な選択肢をご用意すると同時に、何が求められているか、しっかりと寄り添って空間をカタチにしていくことが強みです。今回は、その力が存分に発揮できたプロジェクトだったと実感しています。

さいごに

今回のオフィス移転プロジェクトは、ワークスペースを拡張するという機能面の進化だけでなく、そこで働く人々が"新しい働き方"に気づくきっかけを生む機会となっているのも特徴です。その働き方の可能性を広げ、価値のあるアップデートを実現するためには、企業の理念だけでなく、抱えている課題をしっかりと汲み取り、解決へと導くデザインプロセスが求められます。
デザインの要望、提案を押し付け合うような関係ではなく、施主とTOPPANが伴走しながら、ソリューションが生まれていくオフィスづくりを、これからも続けていきます。





お問い合わせ

TOPPAN 環境デザイン事業部

〒110-8560 東京都台東区台東1-5-1

TEL. 03-3835-6820