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TOPコラム働く環境でコミュニケーションを活性化するグリーンデザインのポイント

<インタビュー>en 景観設計・中山大輔さんに聞く

働く環境でコミュニケーションを活性化するグリーンデザインのポイント


オフィスや商業施設など、人々が集まる空間にいまや欠かせない要素となった「グリーン」。特にここ十数年で大きく様変わりした“働く環境づくり”においては、グリーンがただ置かれているだけの空間から、グリーンそのものが空間全体の価値向上を担う存在となっています。バイオフィリックデザインへの注目が高まるなかで、オフィス・商業施設にグリーン導入をされているen 景観設計株式会社、代表の中山大輔さんにオフィスへのグリーン導入の考え方やポイント、もたらす効果についてお話を伺いました。

Q. 中山さんがグリーンデザインに携わるようになったきっかけを教えてください。

子供の頃からインテリアや建築に興味があって、大学時代にデザインとビジネスの両方に興味を持つようになり、まずは金融業界に進んだのですが、その後やはりインテリアに関わる仕事がしたくなって、景観アーティストであり庭園デザイナーの石原和幸さんを師事しました。その後29歳で独立し、当初は知り合いのお店の隅っこを間借りして細々グリーンを販売していました。石原さんの事務所では庭づくりを学んでいたので、グリーンを売りながら造園の仕事がもらえればと提案販売していましたが、それだけではなかなか食べていけず苦労しました。その頃、ある建築家の方からグリーンのオーダーが入ったのを機に、建築家やインテリアデザイナーに絞って営業を始めました。

グリーンのデザイン提案をおこなうen 景観設計の中山大輔さん(撮影/千葉正人)

以前は、グリーンのことを深く考える建築家はそこまで多くなかったと思いますが、人々が過ごす空間にグリーンがあることで生まれる体験価値が注目され始め、2016年あたりからオフィスのグリーン需要が一気に増えました。現在はレンタル事業やB to C事業も展開しながら、都市においてグリーンに何が求められているのか、グリーンが人の暮らしに何を与えることができるかを考えながら、プロジェクトに取り組んでいます。
今回は、私が関わったグリーンデザインの3つの事例を紹介したいと思います。

1. "「発見」や「驚き」のあるグリーン"

オフィス内の個性的なグラフィックに呼応するように、あえてクセのある樹種を選定。

2. "家具としてのグリーン"

家具の配置が特長的なオフィスに、グリーンと家具を一体化することを提案。

3. "森のようなオフィス"

まるでオフィスの床から木々が生えているようなグリーンデザイン。

某企業オフィスのワークスペース。植物に囲まれたような空間で、集中して仕事ができるよう計画された。

初めに、東京・新橋にある大手企業さんのオフィスです。オフィス移転を機にフリーアドレスを採用されるなど、柔軟な発想でオフィス環境のデザインを考えていらしたので、我々としては“「発見」や「驚き」のあるグリーン”を提案しようと考えました。オペレーションの都合で実現しませんでしたが、グリーンポットをタワー状に積み上げてディスプレイし、フリーアドレスの席を確保する際にそのポットを自席に置くというアイデアを提案しました。最終的に、樹種はすべて沖縄産、計200種近くののグリーンがフリーアドレス空間を埋め尽くすという提案を採用いただきました。この時は沖縄へ全てのグリーンを買い付けに行きました。インテリア空間に個性のあるグラフィックなどが採用されていたので、その空間の雰囲気に合うよう、樹種もクセのあるものをセレクトしました。

窓際にも多くの植物を配し、屋外の風景と外光によってグリーンの生命力をより強く感じさせている。

配置は、生育環境を踏まえながら、外光によってグリーンがより生き生きとして感じられる窓際からレイアウトしていきました。また、利用者が他の人と距離をおきたい時などに利用できる集中エリアには、葉の密度がある樹種を多めに配置し、グリーンに包まれるような雰囲気を生み出しています。

オフィス全体にさまざまな樹種を点在させて、無機質になりがちな場所に有機的な要素を加え、インテリアデザインのオリジナリティや体験価値を高めている。

このオフィスのように、ただの装飾的な要素としてグリーンを導入するのではなく、植物の持つ生命力や存在感、自然の循環といった要素を近くで感じられるような、バイオフィリックデザインの考え方を取り入れたダイナミックな植栽計画は、近年の傾向の一つだと思います。

シェアオフィス内のグリーンの事例。家具と一体化したような植栽計画がなされている。

続いて、これはデベロッパーさんが手掛けるシェアオフィスの事例です。ここでは、“家具としてのグリーン”を提案しました。家具構成がそのままインテリアを創り出しているので、家具と一体化するようなグリーン計画を考えました。家具のレイアウトによってグリーンの役割も変わるため、目隠しをするのか、ニッチを埋めるのか、上に広がりをつくりたいのかなど、現場でイメージを決めていきました。
 

さまざまな高さやボリュームの植物を組み合わせ、空間にリズムを生み出している。

グリーンデザインでは、この“現場で合わせる”ことが重要になります。やはりグリーンは生き物なので、想定した樹種でも形状が思い通りのものがそのタイミングで手に入るとは限りません。樹種選定時には、高さ・サイズ感・ボリューム感などを考慮しますが、予定していた樹種をその場で変えることもよくあります。樹種が変わっても当初のコンセプトやイメージ通りに仕上げられるのが、われわれの力量を見定めていただくひとつの指標になるかと思います。

「森のようなオフィス」をコンセプトに、床から大小様々な植物が生い茂るような植栽計画がなされたオフィス。

三つめの事例は、コンサルティング会社さんのオフィスです。ここの社長はとてもグリーンが好きな方で、コンセプトはずばり“森のようなオフィス”でした。そのため鉢を置くようなスタイルではなく、このフロアを森に見立てて、床から木が生えているようなデザインを提案しました。そのような屋内緑化の手法は初めてでしたが、任せていただけたので、とてもやりがいのあるプロジェクトでした。

植物が空間の一部となり、オフィスの動線やワークスペースの形に影響を与えるような取り入れ方は、近年のトレンドとなっている。

庭をつくる際の考え方に、背の高い(高木)、中間(中木)、足下(低木)を組み合わせるという手法があります。これに合わせて、まずシンボルとなる背の高い木を決めて、それを中心にグリーンを組み立てていった事例です。さまざまな植物のレイヤーと有機的な動線計画によって、オフィスの中に様々なシーンや居場所が生まれることを期待しています。この事例では屋内緑化コンクールで理事長賞をいただきました。この会社では社内に託児所を設けるなど社員が働きやすいオフィスづくりを実践しており、福利厚生の一環としてグリーンのワークショップの開催を予定しています。

Q. グリーンがオフィス空間に与える効果にはどのようなことがあるでしょうか。

中山さんが運営する観葉植物専門店「HITOHACHI」のパサージュ青山店。グリーンデザインやアートワーク制作、植物のレンタル事業、植物の販売の他、グリーンに親しむためのワークショップを実施している。(撮影/千葉正人)

植栽計画やワークショップなどグリーンの仕事に関わるようになって意識していることがあります。それは、自分たちはただグリーンを提供しているだけではなく、グリーンを介在役として、コミュニケーションを提供したいということです。グリーンのレンタルという仕事は、グリーンの提案をして、設置をして、メンテナンスするのが基本ですが、これだけだと他人まかせで、社員の方は何もしないし、できないままです。簡単に、身近にグリーンを眺めることができるのは楽ですが、もっとグリーンに関わってほしいという思いがあります。例えば、育て方のワークショップを行うと、今まで気にしていなかったオフィス内の植物の葉の色や形のことを見るようになったり、土や水のことを考えて手入れをしたりと、オフィスでの過ごし方が変わり、その場所への愛着が生まれるかもしれない。また、一つの植物を社員同士で育てることで生まれる会話や、お気に入りの植物がある心地よい場所に人が集まるといった、新しいコミュニケーションが始まる可能性もあると思います。リモートワークが増えて、リアルなオフィスの存在意義が問われる中で、会社というコミュニティの中で人と人を繋げる存在として、グリーンが果たす役割は大きなものになっていくのではないでしょうか。
最近はグリーンを育成する畑で一般の方々を対象にしたワークショップもはじめました。土をいじり、グリーンを育てる中で、たくさんの方々がふれあい、新しいコミュニティを創造してくれたらうれしいですね。

プロフィール

中山大輔 / en景観設計株式会社

グリーンデザイナー。1981年山口生まれ。武蔵野美術大学卒業後、金融業界に就職。その後、庭園デザイナーとして海外でも数多くの受賞歴を持つ石原和幸氏を師事。2014年en景観設計株式会社設立。現在、同社代表取締役。グリーンデザインやレンタル事業の他、エンドユーザーに向け「HITOHACHI」の店舗運営やEC事業を展開する。手掛けた主な仕事に「BONUS TRACK」(下北沢)、「メルキュール京都ステーション」(京都)ほか多数。 (撮影/千葉正人)

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