コラム

C-lab.デザインコラム

ミラノサローネ2022 デザインレポート
「サステナビリティをデザインし、美をたたえる」

ミラノ

TOPPAN 凸版印刷では30年以上に渡りミラノデザインウィークの取材を行い、デザイントレンドの定点観測を行っています。

60周年記念となった2022年のミラノサローネは、2019年以来3年ぶりの本格開催となりました。テーマは「サステナビリティをデザインし、美をたたえる」で、持続可能性や環境配慮を実現する企業やデザイナーの取り組みが数多く見られました。

このコラムではデザインファーム「C-lab.」の視点で分析したデザイントレンドをご紹介します。またフォームに必要情報をご記入いただくと、より詳細な冊子レポートをお届けいたします。こちらもぜひご覧ください。

目次

1.ミラノサローネ5つのポイントと3つのトピックス

今回のミラノデザインウィークでは、様々な新しい取り組みが発信されました。サステナブルな社会の実現に向けたアイデアの発信、コロナ禍で改めて見直された生活空間における快適性の追求、ノスタルジーな記憶を想起させるクラフトテイストの家具など、その範囲は多岐に渡ります。昨今の社会情勢を踏まえて考えられたこれらの提案は、今後のインテリアシーンにとっても重要な方向性を示しています。デザイントレンドに関する5つのポイントと3つのトピックスをご紹介します。

5つのポイント

サステナブル

①サステナブル

建築家マリオ・クチネッラのキュレーションによる企画展『Design with Nature』では、環境負荷を低減するための素材やアイデアが展開されました。各メーカーにおいてもサステナブルを重要なテーマとして捉え、環境配慮を実現する新しいマテリアルによる新商品の展示が行われました。

コラボレーション

②コラボレーション

業界の枠組みを超えた異業種とのコラボレーション提案が注目されました。ライフスタイルが多様化するなか、ブランドの世界観を深め、人々を魅了するようなコラボレーションが数多く展開されました。

コローレカルド

③コローレカルド

「コローレカルド」はイタリア語でウォームカラーを意味しますが、ここでは色合いを含めた温かい雰囲気を総称しています。グレー、ベージュなどのやさしい色合いをベースに、自然で温かい空気感につつまれたスタイリングが各社で提案されました。

マルチミックスマテリアル

④マルチミックスマテリアル

昨今のインテリアシーンにおいて定着しているマテリアルミックスがさらに拡大。3~4種類のマテリアルを組み合わせて空間や製品を構成する展示が多く確認されました。

ボーダレス

⑤チャンキースタイル

ファッションの世界ではすでにトレンドになっているチャンキースタイルが家具の世界にも拡大。丸みをおびたフォルムに加え、ブークレ生地のようなふんわりした素材感のものが多く見られました。

3つのトピックス

会場で一大トレンドとなっていたリブパネルをはじめ、これからの動向が気になる3つのデザイントピックスをご紹介します。

プラスデジタル

①+デジタル

動画やアートを投影したサイネージで空間を演出する例や、展示のコンセプトを象徴的に表現する手段としてデジタルツールが活用されていました。

クラフト・プリミティブ

②クラフト・プリミティブ

職人の手業を想起させるクラフトアイテムや、素朴さを表現したプリミティブなアイテムがアクセントとして使用されていました。

リブパネル

③リブパネル

多くの展示ブースで確認されたリブパネル。家具、収納扉、キッチン扉から展示ブースの壁面など、様々なシーンで見られ、一大トレンドとなっていました。

CMFトピックス(WOOD/STONE/COLOR)

ミラノデザインウィーク2022では多くの魅力的な素材が使用されていました。コローレカルドの影響が素材トレンドにも現れており、自然で優しい雰囲気を情勢する素材感がポイントとなっていました。C-lab.独自の視点で、注目のCMF(※)トピックスを3つご紹介します。

※CMF…サーフェス(表面)を構成する要素である、COLOR(色)、MATERIAL(素材)、FINISH(加工・仕上)の頭文字を取ったもの。

WOOD

wood

シンプルかつ洗練された表情の木目がボリュームを占めていました。サローネ会場における木目CMFでは、自然で優しい雰囲気を演出するライトオーク、ライトウォールナットと漆黒の黒で素材感が強調されたブラックウッドが目を惹きました。 特にブラックウッドは大手メーカーで多数確認することができ、今後注目していきたいCMFです。マルチミックスマテリアルの影響もあり、全体的な木質使用箇所は減少していました。

STONE

stone

ホワイトやグレー系のマーブルは定番アイテムとして継続しつつ、今年の傾向としてベインと呼ばれるキャラクターが際立ったものが目を惹きました。トレンドアイテムでは、グリーンカラーの石材であるヴェルデマーブルを各社で多数確認することができました また自然感を演出するダイナミックで表情豊かな石材も注目されていました。

COLOR

color

3年ぶりの本格開催となったミラノデザインウィークにおいて、トレンドカラーとなっていたテラコッタカラー。デザインのミラノ復活を印象付けるような力強さを感じさせました。他にも植物と響き合うグリーン、静けさを感じさせるブルーなど、コロナ禍を背景に増加した在宅時間を穏やかに過ごすためのカラーが増加傾向を見せました。

CMFトピックス(KITCHEN)

隔年開催のキッチン見本市「ユーロクッチーナ」では、コロナ禍における生活様式の変化から、キッチンに求めるスタイルや役割の新しい提案が多数見られました。マルチミックスマテリアルやコローレカルドといったリビング空間と同様のスタイルがトレンドとなっており、キッチンが生活の中心となりつつあることを感じさせました。

マルチミックスマテリアル

マルチミックスマテリアル

リビング空間同様にマテリアルミックスが拡大。木質、石材、メタル、セラミックといった3~4種類の素材を組み合わせてキッチンを構成するトレンドが見られました。

コローレカルド

コローレカルド

温かい色合いでスタイリングされたキッチン。リビングとの境界を曖昧にさせ、空間としての統一感を図る提案で、キッチンにおいても快適性が追求されていました。