コラム

C-lab.デザインコラム

【レポート】店舗・施設調査レポート2022
コマーシャルデザインに見るCMF+Pトレンド

ショップ調査

デザインファーム「C-lab.(Toppan Creative Laboratory)」では、デザイナーを中心に店舗・施設調査を経年で行っています。

店舗・施設調査では、首都圏、関西圏の新店舗・施設、ホテル、オフィスなどを対象に、コンセプト、空間デザイン、CMF+P(※)動向の調査を日本流行色協会(JAFCA)と共同で実施しています。このコラムでは最新の調査を通してトッパン独自の視点で分析したコマーシャルデザイントピックスと、空間に使用されている材種やカラー、素材・仕上げのトレンドをご紹介します。

※CMF+P…サーフェス(表面)を構成する要素である、COLOR(色)、MATERIAL(素材)、FINISH(加工・仕上)とpatern(パターン)の頭文字をとったもの


店舗・施設調査概要


調査内容:コンセプト、空間デザイン、ファサード、業態別、部位(床・壁・什器)別CMF+P分析
調査対象:2021年10月~2022年9月オープン
調査店舗数:153店舗(28施設)
調査CMF+P対象数:1404種

目次

1.コマーシャルデザイントピックス

調査期間にオープンした新店舗、新施設ではコロナパンデミックから3年を迎え、withコロナに向けてのコンセプト発信、ニューノーマル時代へのスペースの考え方が提示されていました。今回の調査を通して見られた、カラーパターンの方向性をご紹介します。

デザインの方向性/カラー

再定義

①再定義 / 時間

過去から未来へ。時代のニーズを再考しデザインする。


カラー:合板、段ボール、古いコンクリートやレンガ、植栽の緑を感じるベースカラーに、好き嫌いの少ないダークレッドと藍色をアクセントに。

新サステナブル

②新サステナブル / 自然

創り込まない。自然由来の要素を取り入れデザインする。


カラー:大地や鉱物を感じるベースカラーに、日だまりの光のいろと、水を思わせるグレイッシュブルーをアクセントに。

次世代につなぐ

③次世代につなぐ / Digital

テクノロジーによる新たな価値、体験をデザインする。


カラー:焼いた金属や光の演出を感じるベースカラーに、バーチャル空間のマゼンダやグリーンをアクセントに。

CMF+P 6つのトピックス

3つのデザインの方向性から、CMF+Pの動向を6つのトピックスに分類しました。 それぞれで見られた特長をご紹介します。

木目材種の傾向



From the Earth

#自然の色 #大地の色 #歴史 #地球時間

①From the Earth / 時間

環境保護意識が日常となった今日では、いわゆるアーストーン、大地に根ざす色、空や海、草原や森など、豊かな自然を印象づけるカラーが取り入れられています。
店舗・施設のコンセプトに多くみられた「地域共生」「地域還元」「地域発」など、地域に根ざす姿勢も印象的でした。地域の特性をCMF+Pに取り入れて空間を表現することが盛んになっていくのではないかということを感じます。

また割れ肌の石ブロック、手業を感じさせる左官仕上げ、唯一無二の希少な木材など、時代を感じるテクスチャーは、安心感や心地よさを演出する上で重要な要素になっています。

Up-Cycle / つなぐ

#再構築 #省資源 #リユース #リサイクル

②Up-Cycle / つなぐ

SDGsへの関心が高まる中、今回の調査でも多くのリサイクル・マテリアルや、廃材の再利用といったリユース・マテリアルが多く確認できました。テラゾー、MDF、OSB、各種合板、木毛繊維板、デニムやゴム、プラスチックの再生ボード等、その用途は拡大しており、より身近なものになっています。 店舗や施設でそれらのCMF+Pに触れることで、生活者の環境意識の醸成にもつながっていくのではないかということが伺えます。

店舗のブランドイメージを表現することや過ごしやすい空間づくりに加えて、環境にも配慮した、バランスの取れたCMF+Pのあり方が問われるように感じます。何をどのように、どういう思いを持って見せるかがポイントになっていきそうです。

Smooth, Plane / 飾らない

#素の空間 #飾らない #可変性

③Smooth, Plain / 飾らない

ウィズコロナ時代、グローバル情勢の変化など、私たちを取り巻く環境は大きく変わっています。環境の変化は、過去を振り返り、どこが分岐点だったのか、何を変えるべきで何を変えてはいけなかったのかなど、様々な視点でベーシック・スタンダードを見直すきっかけになります。今回の調査で見られた定番材種であるオークの伸びは、変化の最中にあっても変わらぬ存在や定番の安心感を求める様相を表しているように感じました。
目まぐるしい変化の中、今回の調査で兆しとしてみられたのが「素の空間」でした。プレーンな箱や加飾のない空間で、構造材そのままの床や壁、抑揚のあるモルタル仕上げなど茫洋とした世界観が印象的でした。素であるが故に丁寧な仕事、ディテール処理、仕上げがいっそう際立ちます。

また簡素でテンポラリーなイメージの什器や、空間の仕切りに用いられたカーテンの揺らぎなど、曖昧で不確かな今後に対応する、ゆるさのある空間演出も見られました。

Peaceful / 和み

#ソフトフォルム #懐かしい素材 #優しい世界観

④Peaceful / 和み

不透明な時代だからこそ、和みのあるデザインも求められます。2022年はコロナ禍においてもインテリアやテキスタイルの国際的な展示会が開催されましたが、デザイン、CMF+Pには総じて穏やかな傾向がうかがえました。
6月の「ミラノ・デザイン・ウィーク」において、わたしたちが発信したポイントの一つに『コローレ・カルド』があります。イタリア語でウォームカラーを意味するもので、色合いを含めた温かい総称として説明しました。グレーやベージュなどの優しい色合い、丸みのあるフォルム、ディテール、自然で暖かな空気感が特長的なスタイルです。この潮流は今回の調査においても確認することができました。

Lively Scenery / 楽しむ

#生き生きとした景色 #アクティブ #オプティミスティック

⑤Lively Scenery / 楽しむ

穏やかな「和み」の一方、前向き・ポジティブを具現化するようなCMF+Pも幅広く登場しました。カラーやパターンが楽しめるコラージュ空間では、ストライプ、スクエア、格子、サークル、オクタゴンなどの幾何柄や、木目のリブ形状も数多く確認できました。

また床や壁面のヘリンボン、シェブロン形状に植栽を合わせたり、ランダムブロックのリズム感、グロス・マットの変化するテクスチャー、フラットな仕上げにラフなテクスチャーを合わせるなど、異なる素材の組み合わせも特長的でした。 外出が制限される閉塞感もある中で、訪れてくれた人に活気、元気をもたらしたいという意思を感じました。空間に賑わいを与えるようなCMF+Pはこれからも広がっていくことを予感させます。

Digital effect / 未来へ

#未来的なモノコト #イメージ

⑥Digital effect / 未来へ

昨今、急速に進化するテクノロジーはわたしたちの暮らしに影響を与えています。普段の暮らしの中でも「非日常」を演出するような未来的なモノ、コトが溢れています。
空間に組み込まれたサイネージやプロジェクションマッピングで発信するコンテンツは、訪れた人々の感性を刺激します。購買や体験をサポートするリコメンドシステム等、空間のしつらえやサーフェス(CMF+P)はデジタル世界により、どんどんカタチを変えていきます。変化する光による演出、反射や透過を利用した偏光フィルム、イリデッセント-メタル。道ゆく人の足を止め、想像力を掻き立てさせるSF的なアプローチは今後も増えていくことが伺えます。

2. CMF+P データ編 (WOOD/STONE/COLOR)

今回調査した153物件に見られたサーフェス1,404種のCMF+Pの出現率を表したグラフを基に、傾向をご紹介します。

木目材種の傾向

木目材種の傾向

「その他」以外では「オーク」「ウォールナット」「パイン」がボリュームゾーンで、定番の木目材種であることが分かります。今回の調査でも上位3つの材種は変わらずで、「オーク」「ウォールナット」は前年よりも増加しています。不安定な時代柄、定番や安定といったキーワードが、材種選びにも現れているのかもしれません。

他の材種が微減している中、増加に転じたのが「メープル」材です。フルーツウッドカテゴリーとして、明るい色調、ソフトな木理が確認できました。しっかりした木理表現が特徴の「アッシュ」「エルム」は一定量をキープしています。

木目カラーの傾向

木目カラーの傾向

全体傾向として「ホワイト」から「ナチュラル」「ライト」の明るい色調が主流となっています。自然な素の表情、色合いを活かした仕上げを中心に、木をブリーチ(漂白)して明るく仕上げたり、ホワイトトナーを薄く施したりと明色でのバリエーションが展開されていました。
ミディアムブラウンの色調ボリュームは変わらずですが、その中では「モカ」が増加しており、ウォールナットの素地色、オークのモカ色仕上げが確認できました。

ニュートラル系では「ライトグレー」が増加。木目本来の温かみをグレーで抑えたグレージュ仕上げが特長です。素材・仕上げの出現率グラフで定番化している「モルタル」カラーとの組み合わせも確認できました。

石材種・その他素材の傾向

石材種・その他素材の傾向

石目ではマーブルは堅調ですが、石材種全体では減少となっています。モルタル、塗装・単色がボリュームゾーンですが、減少傾向にあることから、素材の多様化が伺えます。

2021 年素材系としていた箇所の内訳は、タイル、レンガ等の窯業系、スチールやカパーのメタル系が多くなっています。布、土・左官、和紙等、和の素材もアクセントとして使われています。

石材種・その他素材 カラー傾向

石材種・その他素材 カラー傾向

昨年は減少にあった有彩色でしたが、今回の調査では増加に転じました。
「ブラウン系」が多く、次いで「グリーン系」「ブルー系」となっています。地球の自然をインスピレーションさせる大地や空や海、森の色は堅調です。

「レッド系」の色は、ピュアな赤、べんがらなど、「日本・和」を感じさせるレトロな味わいの空間で確認できました。無彩色では「ホワイト」「ライトグレー」が主流で、「ダークグレー」「ブラック」は減少しています。

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