
マンションで暮らしていると、ピアノの音やオンライン会議の声が気になり、「防音室がほしい」と感じる瞬間もあるのではないでしょうか。
とはいえ、マンションは構造や管理規約による制限が多いのが実情です。可能な工事内容や必要な費用など、わかりにくいことも多いでしょう。
この記事では、
- マンションで実現できる防音室の種類
- 防音室リフォームの費用相場
- 目的別の選び方
- 工事前に確認すべき注意点
について、まとめて解説します。
読めば「ピアノを思い切り弾きたい」「テレワークの会話を聞かれたくない」「配信に集中できる部屋がほしい」など、あなたの目的に合う方法が見つかります。マンションでの防音室づくりを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
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マンションに設置できる防音室の種類と特徴
マンションでつくれる防音室には「部分的な防音」「ユニット式」「一室まるごとリフォーム型」の3つがあります。
工事規模や遮音性能が大きく変わるため、違いを理解して自分に合う選択肢を探っていきましょう。
部分的な防音

部分的な防音は、壁だけ、窓だけというように、ピンポイントで施工する方法です。必要な場所だけに手を加えるため、コストを抑えやすくマンションでも取り入れやすいのが特徴です。
具体的には、次のような内容があります。
| 防音箇所 | 方法 |
| 壁 |
・下地に遮音パネルや遮音シートを挟み、空気音(話し声・テレビ音)を伝わりにくくする ・吸音パネルを貼り付け、室内の反響を抑え、隣室への音漏れも軽減する |
| 窓 | ・内窓(二重窓)を設置し、外部の騒音を抑え、室内の音漏れも軽減する |
| 床 | ・防振マットを敷き、歩行音や小さな振動を階下に響きにくくする ・二重床にして床構造を安定させ、重低音や振動の伝わりを抑える |
| 扉 | ・すき間を気密材でふさぎ、音漏れを軽減する ・防音ドアに交換し、気密性を高め、音の出入りを押さえる |
ピアノなど、楽器の音漏れには十分ではありませんが、生活音や会話音の軽減には効果的です。在宅勤務の声漏れ対策などにも選ばれています。
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ユニット式・組み立て式の防音室

ユニット式の防音室は、あらかじめつくられた壁パネルを組み立てて設置するタイプで、室内に置く「防音の箱」のような構造です。
専門業者が現場で組み上げるものだけでなく、DIY対応の製品もあります。マンションでも導入しやすく、楽器演奏・声楽・ナレーション収録など、多様な用途に対応できます。
ユニット式の防音室は、搬入経路や床荷重の確認は必要なものの、設置自体は半日〜1日で完了するため大掛かりな工事にはなりません。
さらに、引っ越し時に移設できるのも、ユニット式防音室の大きな特徴です。そのため、賃貸マンションの防音室として、選択肢に選ばれやすいです。
ただし、製品による性能差が大きく、音源によっては音漏れや振動を感じることもあります。目的に応じて、必要な遮音性能をチェックしながら選びましょう。
一室丸ごとリフォーム型の防音室

一室丸ごとリフォーム型の防音室は、大工工事や内装工事でつくる「オリジナルの防音室」です。
壁・床・天井を二重構造にして、防振材を挟むことで振動や空気音の伝わりを大幅に抑えます。ピアノや管楽器など音量の大きい演奏、レコーディングのための環境を整えたい方には、この方法が適しています。
既存の部屋に合わせてオーダーメイドでつくる形になるため、見た目が自然で、暮らしの中に馴染みやすいのもメリットの一つです。設計段階で空調・換気・照明も計画できるので、長時間作業しやすい空間に仕上げられます。
費用は高めですが、性能・快適性・仕上がりの総合力は最も優れた仕様といえます。
ただし、工期が数日〜数週間に及ぶこともあります。また、管理規約で工事内容に制限がかかるケースもあるため、契約前に管理組合へ確認しておくと安心です。
マンションへの防音室設置にかかる費用相場

防音室の費用は、選ぶタイプや遮音性能によって変わります。
ここでは、マンションで採用されやすい3つの工法を比較しながら、目安となる価格帯と費用を左右するポイントを解説します。
防音室タイプ別の費用相場
代表的な3つの方法の費用相場は、次のとおりです。
| タイプ | 費用相場 | 価格を左右する主なポイント |
| 部分的 | 5〜30万円程度 | ・施工箇所の数と広さ ・内窓や防音ドアの性能 ・防振材のグレード |
| ユニット式 |
40〜80万円(小型) 150〜250万円(6畳程度) |
・サイズと遮音性能 ・パネルの構造(吸音材の種類) ・搬入経路や追加オプションの有無 |
| 一室まるごと | 150〜300万円以上 | ・D値(遮音性能)の高さ ・壁・床・天井の二重構造の範囲 ・空調・換気・照明などの付帯工事 |

遮音性能(D値)と価格の関係
防音室の費用は、「どの程度の音をどれだけ抑えたいか」によって変わります。遮音性能は 「D(Dr)値 」で表され、数字が大きいほど音を通しにくくなります。
使い方に応じたD値の目安は次のとおりです。
- D-30〜35:生活音・会話音の軽減
- D-40〜50:ピアノ・声楽の基本的な練習
- D-55以上:本格的なピアノ環境
-
D-60〜70:ドラム・大音量の映画鑑賞・レコーディング向け
D値が上がるほど、壁厚・床構造・サッシ性能・ドア性能が必要になり、費用も上がります。
「どの音を抑えたいか」を明確にすると、無駄な予算をかけずに必要な性能だけを選べるようになります。目的と予算のバランスを取りながら、ご自宅に合う性能を判断しましょう。
その他の費用(空調、防音ドアなど)
防音室を安全かつ快適に使うためには、換気設備や防音ドア、照明といった基本設備が不可欠です。
ユニット式では標準装備されていることもありますが、一室リフォーム型では個別に設置するため、費用に差が出やすい部分です。
また、使用時間が長い場合や機材が多い場合は、空調(エアコン)やコンセントなどの設備を追加すると使い勝手がさらにアップします。
おもな設備と、おおよその費用は次のとおりです。
- 換気設備(防音仕様):5〜15万円程度
- 防音ドア(高気密仕様):10〜25万円程度
- 空調設備(壁掛けエアコンなど):5〜20万円程度
- 照明・コンセントの増設:1〜3万円程度
見積もり時には、どこまで含まれているかを確認しておくと安心です。
目的別!最適な防音室の選び方

防音室は、使い方によって必要な性能や素材が異なります。同じ「音を抑えたい」という目的でも、楽器演奏・声楽・配信・映画鑑賞・テレワークでは、求める遮音の方向や響き方が変わるからです。
ここでは以下の用途別に、どのような防音仕様が合うのかを紹介していきます。
- 楽器演奏
- 歌・声楽・ナレーション
- オーディオルーム・ホームシアター
- ライブ配信・ゲーム実況
- テレワーク・書斎
楽器演奏(ピアノ、ギター、ドラム、管楽器など)
楽器の種類によって、音の大きさや振動の質が異なります。そのため、求められる遮音性能にも幅が出てきます。
ピアノの場合はD-55以上が目安です。ユニット式でも対応できるケースはありますが、音の広がりや床への振動を考えると、一室まるごとリフォーム型のほうが安定した性能を確保できます。
ドラムや打楽器はD-65以上の高い遮音性能が必要です。ユニット式では対応しきれないため、床防振を含む部屋全体の防音リフォームが前提になります。
どの楽器も、夜間に演奏する場合は隣戸への影響が大きくなるため、遮音性能を一段階高めに設定するのがおすすめです。
歌・声楽・ナレーション
声楽やナレーションは音量が安定しにくく、ピークが高くなることもあります。遮音性能はD-35〜40程度を目安に考えておきましょう。ユニット式でも対応しやすい範囲です。
仕上がりを左右するのは、声の響き方と吸音のバランスです。設計によってはこもったり、逆に響きすぎて喉に負担がかかったりすることもあります。
見積もり時に「歌の練習に使う」「ナレーション収録がメイン」など、用途を具体的に伝えておきましょう。こうした情報があると、声がきれいに録れ、歌いやすい空間に調整してもらいやすくなります。
オーディオルーム・ホームシアター
映画や音楽を大迫力で楽しみたい場合は、D-60〜70程度の高い遮音性能が必要になります。ユニット式では大型スクリーンの設置が難しく、遮音性能にも限りがあるため、一室まるごとリフォーム型を検討しましょう。
リフォーム型なら、部屋の広さや形に合わせた最適な音響バランスを整えられます。音楽の奥行きまで感じられるオーディオルームや、映画館のような臨場感を味わえるホームシアターも実現可能です。
ライブ配信・ゲーム実況
ライブ配信やゲーム実況では、声がクリアに録れ、生活音をマイクが拾わない環境づくりがポイントです。
大きな音を出すことは少ないため、必要遮音性能はD-30〜35程度で十分です。壁や窓だけの部分防音や、小型ユニット式で対応できます。
機材が多い場合は熱がこもりやすいため、換気や温度管理も大切です。換気システムや静音エアコンを組み合わせ、長時間でも快適に作業できる環境をつくりましょう。
テレワーク・書斎
テレワークのスペースや書斎として使う場合は、家族の生活音を抑えつつ、自分の話し声が周囲に漏れにくい程度の軽めの防音で十分です。
必要遮音性能はD-25〜30程度で、部分的な防音や小型ユニット式の導入で解決するケースがほとんどです。
ただし長時間過ごす空間になるため、照明・コンセント・空調の配置にはこだわりましょう。静かで使い勝手の良い環境として整えると、集中できるスペースになります。
マンションで防音室を設置する際の注意点

マンションで防音室をつくる場合、構造や管理規約による制限があります。
工事後に「思った仕上がりと違った」「近隣とのトラブルになってしまった」といった後悔を防ぐためにも、次のポイントを事前に押さえておきましょう。
- 管理規約を事前に確認する
- 「ひと回り狭くなる」点に注意する
- 防音室内の快適性にも考慮する
- 実績豊富なリフォーム会社を選ぶ
管理規約を事前に確認する
マンションで防音室を設置する際、最初に確認すべきなのが管理規約です。
一室まるごとリフォームする場合、二重床・二重壁の禁止や、建材の重量制限などのルールに触れる可能性もあります。専門的な内容が書かれている場合も多いので、リフォーム会社と一緒にチェックするのが確実です。
管理規約で工事内容に問題がないことを確認できたら、次に必要なのが管理組合への事前申請です。
壁・床・天井を触る工事は専有部分内であっても騒音や振動が発生するため、大半のマンションで申請が義務付けられています。ユニット式のように現場工事が少ない場合でも、「搬入日程」や「作業時間」の届け出を求められます。
申請の流れや必要書類はマンションごとに違うため、リフォームを検討し始めた段階で、管理会社に一度問い合わせておくと安心です。
「ひと回り狭くなる」点に注意する
一室丸ごとリフォーム型の防音工事では、壁や床に下地材や吸音材を重ねるため、室内がひと回り狭くなります。6畳の部屋が、施工後に実質5畳前後になるケースもあり、楽器のレイアウトやデスク配置には事前の寸法確認が必要です。
ユニット式でも「部屋の中に箱を置く」構造のため、防音室の内寸が小さくなるだけでなく、設置した部屋自体にも圧迫感が生まれます。
図面上で完成後の内寸を確認し、動線も含め問題がないかどうかを細かくチェックしておきましょう。
防音室内の快適性にも考慮する
防音性能を高めると気密性が上がる分、空気が滞留しやすくなります。換気が不十分だと、機材に熱がこもりやすいうえに、体調への負担も大きくなる点には注意が必要です。
そのため、防音室づくりでは「どれだけ音を抑えるか」だけでなく、静音性の高い換気設備や空調を確保することも重要です。室内の空気をゆるやかに循環させる計画を立てておくと、長時間の演奏や作業でも快適に過ごせます。
防音性能だけでなく、ストレスなく使い続けられる環境づくりまで意識していきましょう。
実績豊富なリフォーム会社を選ぶ
防音工事は、マンションの構造や音の伝わり方を理解したうえで計画しなければなりません。経験豊富な会社ほど、音漏れリスクや近隣トラブルを未然に防ぐ提案ができます。
たとえば、「どの方向へ音が伝わりやすいか」「隣室の梁・壁の構造がどう影響するか」「換気や扉の気密性がどの程度必要か」といった細かい判断は、知識や経験がものをいう部分です。実績のある会社なら、周囲への配慮が行き届いたプランや工事スケジュールの組み方まで提案可能なため、トラブルの心配も減ります。
「どこまでの防音性能が必要なのか」が曖昧でも、経験豊富な会社であれば、使い方とライフスタイルに合ったプランを提案してくれますよ。
信頼できるリフォーム会社選びのポイント

防音リフォームで会社選びに失敗しないためには、次のポイントを確認しておきましょう。
- 必要な遮音性能(D値)を、用途に合わせて具体的に説明できるか
- 現地調査やヒアリングが丁寧か
- 見積もり内容が細かく分かりやすいか
防音リフォームは、工事内容によって費用も仕上がりも変わります。そのため、「何のために、どの程度の音を抑えたいのか」を一緒に整理してくれる会社を選ぶことが大切です。
たとえば、D値の根拠まで説明してくれる会社なら、こちらの用途に合った提案が期待できます。性能の過不足も起きにくく、無駄なコストを抑えながら計画できるでしょう。
また、現地調査やヒアリングの丁寧さも重要なポイントです。部屋の構造や寸法だけでなく、使用時間帯・隣室との距離・生活スタイルまで確認してくれる会社のほうが、最適なプランを提案してもらいやすくなります。
「どこに相談すればいいかわからない」という方は、防音工事の実績がある会社を比較できるサービスを使うのも一つの方法です。
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【5ステップ】防音室を設置するまでの流れ

防音室のリフォームは「どんな流れで進むのか」がわかると、完成までのイメージがつかみやすくなります。
リフォーム会社と連携しながら、用途に合った防音室づくりを進めていきましょう。
STEP1:情報収集とリフォーム会社選び
最初のステップでは、防音室の種類・費用・施工事例などを調べて大まかな方向性をつかむところから始めます。自分で遮音性能を判断するのは難しいため、まずは「どんな用途で使いたいか」「どんな音が気になるか」を整理しておきましょう。
そのうえで、防音工事の実績がある会社をいくつかピックアップします。マンションでの工事経験や口コミ、過去の施工事例なども参考に、相談したい会社の候補を絞っていきます。
STEP2:現地調査とヒアリング
候補が決まったら、実際の部屋を見てもらうために現地調査を依頼します。壁・床・天井の構造や寸法、配管の位置などを細かくチェックしてもらいます。
この時に、「どんな音を、どれだけ抑えたいか」という希望を伝えましょう。生活スタイルや使用する楽器、時間帯まで共有すると、より適切なプランをつくってもらえます。
STEP3:プランニングと見積もり
現地調査をもとに、遮音性能の設定や内装の素材、施工範囲などを含めたプランが提案されます。同時に見積もりが提示されるので、費用と性能のバランスを確認しながら比較検討しましょう。
換気や空調などのオプションも、この段階で相談しておくと後悔しにくくなります。
STEP4:契約と施工
プランと見積もりに納得したら契約に進みます。
マンションの工事では管理会社への申請が必要になることが多いため、工事内容・日程・作業時間を事前に確認しておきましょう。施工期間は数日〜数週間ほどで、内容によって変わります。
工事中は騒音や振動があるため、周囲への配慮も必要です。
STEP5:引き渡しとアフターフォロー
工事が完了したら、仕上がりや遮音性能を一緒に確認します。扉の気密性や換気の動作、内寸の誤差なども細かくチェックしましょう。
引き渡し後は、生活の中で気になる点が出てくる場合もあるため、アフターフォローの体制が整っている会社だと安心です。使い方の相談やメンテナンスも気軽に聞ける関係が理想です。
まとめ
防音室をつくれば、楽器演奏やスクリーンでの映画鑑賞など、自宅での過ごし方の幅がぐんと広がります。
この記事では、防音室の種類・費用・選び方・注意点まで、マンションでの防音リフォームに必要な情報をまとめて紹介しました。
マンションで防音室を検討する際に、特に押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- 用途によって必要な遮音性能が変わるため、目的の整理が必須
- 管理規約や構造の制約により、選べる工法が限られることがある
- 快適に使うためには、換気・空調・照明などの計画も大切
理想の防音室を実現するのに重要なのが、適切な性能と工法を提案できるリフォーム会社に依頼することです。
しかし、防音室に特化した実績を持つ会社は多くなく、自分で探そうとすると手間と時間がかかります。そんなときは、リフォーム会社紹介サイトなど無料のサービスを活用してみるのがおすすめです。
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マンションの防音室に関するよくある質問
賃貸マンションでも防音室を設置できる?
工事が必要ないユニット式防音室なら原状回復がしやすく、賃貸でも設置できる場合があります。一方、一室まるごとの防音リフォームは原状回復が難しいため、賃貸ではほとんど認められません。管理会社には、必ず事前に確認しましょう。
防音室は何年くらい持つ?
防音室の耐久年数は、施工方法や使い方で大きく変わります。ユニット式は比較的劣化が少なく、10〜20年ほど使えることが多いです。一室リフォームの場合は、一般的な内装と同様、適切にメンテナンスすれば長期的に使用できます。
マンションで隣室・上階からの音を防ぐには?
隣室からの音には壁の部分防音、上階からの足音には天井の防振施工が効果的です。窓から入る騒音には内窓の設置が役立ちます。生活音の種類によって対策方法が異なるため、どの方向からの音が気になるかを整理し、リフォーム会社に相談してみましょう。
執筆者
中村しょう子

二級建築士・ライター。建設会社で現場監督・設計・CAD製図・積算・営業など幅広く経験。現場を知る強みを活かし、ハウスメーカーや工務店のSEO記事、建設・不動産会社の取材記事から一般向けメディア記事まで、多様な建築系コンテンツを手掛ける。
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