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2026-08-21

RESEARCH

3daysofdesign 2026レポート|「新しさ」よりも、「価値を重ねる」デザインへ

世界的にも注目度の高まる北欧のデザイントレンドの今を体感できるイベント「3daysofdesign」が、今年も6月10日~12日までデンマーク・コペンハーゲンで開催されました。例年、夏前の爽やかな季節を存分に満喫できる6月のコペンハーゲンですが、年を追うごとに来場者も増え、今年は特に日本からの出展者や来場者も多かったようです。
今回のテーマは「Make This Moment Matter」。8つのDesign Districtsに460以上のブランドが参加し、600を超えるイベントを展開しました。会場で目立っていたのは、素材、光、音、香り、クラフトを通して、ブランドの価値を“体験”として届けようとする姿勢です。
例年以上に、何を見せるかだけでなく、どのように受け取ってもらうかまでが丁寧にデザインされた展示が目立った今年の3daysofdesignについて、今年もC-labの視点を交えてご紹介します。

プロダクトを“作品”として見つめ直す

最初に印象に残ったのは、家具や照明を日常の生活シーンから切り離し、造形や背景そのものに視線を向けさせる展示です。

HAYは現代美術機関O–Overgadenを会場に、過去・現在・今後発表予定のデザインを同じ空間に配置。異なる時代のプロダクトを呼応させ、単体の造形だけでなく、デザイン同士の関係まで意識させる構成でした。VitraやFredericiaも、新作とアーカイブを並べ、ブランドが積み重ねてきた時間を一つの物語として提示しています。

「何が新しいか」を競うのではなく、過去と現在を重ねることで、見慣れたプロダクトに新たな意味を与える。展示空間は、ブランドの歴史を読み解く静かな舞台になっていました。
HAY

昨年までの旗艦店HAY Houseでの展示とは別に、新しい場所での展示を行ったHAY。現行アイテムと共にPhilippe Malouinが手がけたMimi SofaやJasper MorrisonのPack Chairなどの新作の発表を行いました。シンプルな空間の中でHAYならではのポップなカラーリングや、遊び心のあるフォルムがブランドらしさを表現していました。
Fredericia

Milanoで発表した「Fredericia: A Chronicle of Danish Design」を、自社ショールーム向けに再構成。歴史的な家具やアーカイブ資料、現代のプロダクトを複数の空間にわたって展示し、100年以上にわたるデンマーク家具デザインの歩みを紹介。デンマークデザインが現在まで連続して受け継がれていることを伝える構成が印象に残る展示でした。
Vitra

2026年の新作とブランドを代表するアーカイブ作品を並列に紹介し、過去から現在へ続くデザインを展示。オレンジ色のファブリックに包まれた空間では、Studio Œと共同開発した新作ラウンジチェア「Bascule」を中心に、生誕100周年を迎えたVerner Pantonのリミテッドエディション家具やPanton Cubesの展示を行っていました。

静けさの中に豊かさを宿す

Audo、&Tradition、GUBIなどの展示からは、穏やかで洗練された暮らしのイメージが立ち上がってきました。落ち着いた色彩、柔らかな光、自然素材、そして十分な余白。華やかさを前面に出すのではなく、家具や照明、建築が自然に溶け合うことで、空間全体に上質さを宿しています。

ベースとなるのは、ウォームホワイト、サンドベージュ、グレージュ、ストーングレーなどのニュートラルカラー。そこにバターイエロー、ダスティブルー、オックスブラッドといった彩度を抑えた色を重ね、素材の表情を損なわず、空間にゆるやかなリズムを生んでいました。

これからのラグジュアリーは、目を奪う豪華さよりも、長く過ごしたくなる静けさの中にあるのかもしれません。
AUDO Copenhagen

「Quiet Grandeur」をテーマに、より穏やかで持続性のある現代の暮らしを提案。会場では、7つの新作を既存コレクションとともに展示し、新旧のプロダクトが自然に調和する空間を構成していました。また、ブランドを象徴するラウンジチェア「The Tired Man」の誕生90周年を記念した展示に加え、バーやシネマルームなどの体験プログラムも展開し、ブランドの世界観を建物全体で体験できる構成となっていました。
&Tradition

「Traces」をテーマに、デザインやクラフト、文化が受け継がれてきた痕跡をたどる展示を行った&Tradition。Hee Wellingによる「Rely」シリーズの新展開や、Verner Panton生誕100周年を記念した展示を通して、現代のコレクションとブランドのヘリテージを結び付ける構成となっていました。落ち着いた色彩や素材を生かしたスタイリングにより、それぞれのプロダクトが自然に空間へ溶け込み、穏やかで上質な暮らしを感じさせる展示でした。
GUBI

「GUBI SCENES」では、リビングやダイニングなど暮らしのシーンを想起させる4つの異なる空間の中で、新作の発表が行われました。落ち着いた色彩や柔らかな光、異なる時代の家具や照明、アートを組み合わせることで、洗練されたライフスタイルを提案。会場では、Hornbæk Portable LampやBrim Chair、Totto Stool、復刻したLotus Lampなどが披露され、住空間とホスピタリティ空間を思わせる上質なコーディネートが来場者を魅了していました。

素材は、説明されるものから体験するものへ

素材の見せ方にも変化が表れていました。Søuldはアマモ由来の吸音材を、光と陰影を生かしたインスタレーションとして展示。Dinesenは木材を床から壁、天井へと連続させ、MUTINAは立体セラミックを壁面や間仕切り、什器として用いました。素材を並べて説明するのではなく、素材そのものに空間をつくらせていたブランドが多くみられたのも今年の特徴だったように思います。

CMFでは、新素材の登場よりも、既存素材の表情をどう引き出すかが重視されていました。深みのあるブラウンやブラックの木目、自然な艶を与えるオイルフィニッシュ、マットな質感の中に効かせた鏡面仕上げ。キッチンやバスルームでは、ブラックストーンと木、タージマハルなどが、重厚さと温かさを両立させています。
素材は、スペックを読むだけでなく、実際に触れて、光の移ろいの中で感じるものへ。その伝え方自体が、空間の魅力になっていました。
Søuld

Søuldはアマモ(eelgrass)由来の吸音材を、Norm Architectsがキュレーションした「Composed Matter」で展示。会場では、アマモが持つ吸音性や炭素貯蔵性、自然素材ならではの質感を、光や空間演出を通して体感できるインスタレーションとして紹介していました。素材の世界観を表現するスタイリングを重視し、空間演出によって素材の魅力を伝えていた点が印象的です。
Dinesen

木材ブランドDinesenは、自社ショールーム内のGalleryをリニューアルし、新たな壁材・天井材を発表しました。木材を床だけでなく壁や天井まで連続的に用いることで、素材そのものが空間を構成する展示となっており、木の質感やスケール感を存分に感じられるショールームでした。
MUTINA

セラミックタイルメーカーのMUTINAは2026年の新作である立体セラミックモジュール「Emisferi」と、Ronan Bouroullecによる花器・ミラーコレクション「Carrousel」を発表。
2つのコレクションは、セラミックを表面材にとどまらず、オブジェや建築要素として捉え直す構成となっており、素材によって空間を構成することで、その魅力や可能性を伝えるしつらえが印象的です。

ブランドの世界観に没入する

暮らしを忠実に再現するのではなく、ブランドの価値観を抽象化し、一つのインスタレーションとして見せる展示も増えていました。

TEKLAは、パッチワークキルトと木組みの什器から、家庭の記憶やクラフトの継承を表現。Bang & Olufsenは歴史ある邸宅でリスニング体験やライブパフォーマンスを展開し、製品の先にある時間や感情を印象づけました。FRAMAは香りを空間のデザイン要素として扱い、整然さと違和感が共存する独自の世界をつくっています。

光、音、香り、素材の手触りを通してブランドを理解する。ブランドの思想をより強く記憶に残す体験の場として展示のあり方も変化しています。
TEKLA

「The Heart of Living」をテーマに、スウェーデンの伝統的なパッチワークキルトを現代的に再解釈した展示。パッチワークキルトと呼応するような木組みのベッド什器やホープチェストを組み合わせることで、家庭の記憶やクラフトの継承といった「暮らしの記憶」を空間全体で表現していました。
Bang & Olufsen

歴史ある邸宅を舞台に、空間全体を一つのインスタレーションとして構成した展示を行ったBang & Olufsen。プロダクトを空間の象徴的な要素として取り入れ、現実の住空間とは異なる幻想的な演出によって、ブランドが描く世界観を表現していました。リスニング体験やライブパフォーマンスも組み合わせることで、製品そのものではなく、それを通して得られる体験や価値を印象づける展示となっていました。
FRAMA

巡回展「The Mechanics of Scent」の帰還に合わせ、Studio StoreとApartment 57aを舞台に、香りをテーマとした展示を行ったアポセカリーブランドのFRAMA。初公開となる「Scent Sculptures」を通して、香りを空間のデザイン要素として提案していました。散りばめられたアートピースや、一見不自然とも感じられる位置に配置された日用品と、整然と並ぶプロダクトとのコントラストが、秩序と違和感が共存する独特の世界観を生み出していました。

重ねることで生まれる、「Layers of Meaning」

今回の一連の展示を通して感じたのは、既にある価値を異なる視点で重ね直す姿勢です。

名作と新作を重ねる「時間」。重厚な木や石に、透け感のあるファブリックや軽やかな色を重ねる「素材」。北欧の価値観を基盤に、日本やアジアの要素を再解釈する「文化」。日本語の書籍、囲碁、和紙の照明なども、異国趣味的な装飾ではなく、空間の雰囲気をつくる一要素として自然に溶け込んでいました。

3daysofdesign 2026が示していたのは、強い言葉で価値を説明することより、意味がゆっくりと立ち上がる体験をつくることの大切さです。見慣れた素材や文化、積み重ねてきた時間を丁寧に編集し、まだ見たことのない価値へつなげていく。その視点は、これからの空間づくりを考える上で、大きなヒントになりそうです。
以上が今年C-labが視察した3daysofdesignの様子でした。
静かに、柔らかく、しかし歴史の積み重ねを感じる芯の通った北欧ブランドの意志を強く感じた今年の3daysofdesign。暮らしに根ざしたデザインは新しさと共に懐かしさを感じるものが多く、幾重にも重なった価値観がデザインに一層深みを与えていました。
ミラノサローネとも違った魅力のある3daysofdesign。来年も同じ時期に開催が予定されていますので気になっている方は計画を立ててみてはいかがでしょうか。時代の潮流に流されない、デザインのヒントが見つかるかもしれません。
今回ご紹介した3daysofdesignをはじめ、C-labが蓄積しているグローバルデザイントレンドについて、より詳しく内容が知りたい方は下記よりお問い合わせください。

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