Topics

サーフェスデザインに関する情報などを随時配信

C-lab. Topics

  • TOP
  • C-lab. Topics
  • 2025年ミラノサローネ速報|最新トレンドと注目ポイント
DESIGN

2025年ミラノサローネ速報|最新トレンドと注目ポイント

春のミラノで世界最大規模のインテリア見本市が開催

4月のイタリア・ミラノは寒さが和らぎ、明るく穏やかな気候です。
そんな春の陽気を感じられるこの季節に、今年も第63回Salone del Mobile.Milano|ミラノサローネ国際家具見本市(以下、ミラノサローネ)が開催されました。
会期中の来場者数は302,548人を記録し、来場者の68%は海外からの訪問者とのことで、世界中からインテリアの新作トレンドを求めて訪れたことがわかります。
世界最大規模となるインテリアの祭典にて数々の新作が発表される中、筆者が注目した展示と現地の様子を速報としてお届けします。

今年のキーワードは「新旧の調和」

Molteni&C
Molteni&C

30年以上にわたりミラノサローネを視察している我々の視点から見ると、2025年は「新旧の調和」が主要テーマとして浮かび上がってきました。特に1960〜1980年代の不朽の名作が、現代の視点で再解釈されて登場する傾向が顕著です。

Molteni&Cは、新作家具も、ショールームも新旧の調和がなされていたので、ピックアップしてご紹介します。第一回ミラノサローネから継続して出展していたフィエラ会場での展示を取りやめ、新ショールーム”パラッツォモルテーニ”にて新作を発表。19世紀後半に建てられた邸宅を改装し、ブランドらしい低彩度のシックな空間をベースにアート作品と共存しながら空間全体をモダンにキュレーションしています。フロアは計6つあり、上の2フロアはVIPスペースとして新たに増築され、まさしく「新旧の調和」がなされています。

ジオポンティがMolteni&Cにて過去に発表した作品
ジオポンティがMolteni&Cにて過去に発表した作品

一際注目を集めたのは、各フロアの踊り場に20世紀イタリアを代表する建築家/デザイナーであるジオポンティの名作家具を中心としたコーディネート。「移動」の間の「静」を感じさせる階段の踊り場を単なる通路ではなく、記憶に残る「間(ま)」として捉え、一息つきながらブランドの歴史を振り返ることができる工夫が施されています。

また、ミラノ市街地で開催されている“Fuorisalone(フォーリサローネ)”でも、「新旧の調和」を彷彿させるアプローチが随所に感じられました。
特に注目したいのは、Cassinaが発表したインスタレーション《Staging Modernity》です。この作品は、1965年から始まったコルビュジエをはじめとする3人の巨匠とのコラボレーション作品を振り返るもので、デザインスタジオFormafantasma(フォルマファンタズマ)が監修を務めました。

Cassina_Staging Modernity

会場となったのは、ミラノでおよそ250年にわたり人々に愛されてきた歴史ある劇場「Teatro Lirico Giorgio Gaber(テアトロ・リリコ)」。その空間では、観客が自由に回遊できる形式の演劇が上演されており、60年前に誕生した名作家具と演劇が一体となって展開されます。観客に没入型体験を与え、舞台では人・モノ・自然の境界が曖昧になり、融合していく様子を体感できます。

名作復刻の意義 — 「デザインリテラシー」を育む
今年のミラノサローネでは、フィエラ会場や市街地の両方で、過去の名作が数多く復刻されているのが印象的でした。これらの復刻は単なる再現ではなく、現代の感性で再解釈され、新たな価値を見出す挑戦です。最近はSNSを通じて個人の「好き」が深めやすくなっていますが、その一方で多様な「良いデザイン」に触れる機会は減少しているかもしれません。こうした状況下で、名作に再び光を当てることは、広い視野でデザインを捉える力、すなわち「デザインリテラシー」を育てる貴重なきっかけとなります。
名作の復刻は、次世代へのデザイン文化の継承を担う重要な役割を果たしており、単なる懐古趣味ではなく、未来のデザイン文化を豊かにするツールといえるでしょう。

ミラノの高級住宅街で歴史と文化を体感“Villa Necchi Campiglio”

姉妹の写真と邸宅の外観
イタリア初の国産家庭用ミシン

今回はミラノサローネだけではなく、筆者がミラノ滞在中に足を運んだおすすめスポット“Villa Necchi Campiglio”(以下ネッキ邸)をご紹介します。
ネッキ邸とは、イタリア初の国産家庭用ミシンを開発した「ネッキ社」を営む姉妹がミラノの一等地に建てた邸宅です。1930年代に予算上限なしに、国産材がふんだんに使われたモダニズム建築の傑作として、現在は一般公開をされている歴史的建造物です。

邸宅2階の姉妹居室のフロア

近代の富の在り方を後世に繋ぐこの邸宅で、私が心を奪われたのは2階にある左右対称に設計された姉妹それぞれの部屋です。間取りや設備はまったく同じながら、それぞれの空間には異なる美意識が息づいています。写真右側の部屋はピンクを基調としたフェミニンで柔らかな雰囲気。曲線的な家具や繊細かつ華やかな装飾が、まるでおとぎ話のワンシーンのような空間。

ブルー基調のクラシカルな空間
姉妹の部屋の間にある簡素なテーブルとチェア
ピンク基調の朗らかな印象の空間

一方、左側の部屋はブルーを基調に、クラシカルでシンプルな印象。余白を活かした空間作りに知性と品を感じさせます。好みは違えど、どちらも抜群のセンス。当時の暮らしに想いを馳せるとお互いの生活スタイルや美的感覚を尊重し合いながら暮らしていたことがひしひしと伝わります。その象徴ともいえるのが、ふたつの部屋をつなぐ廊下の先にひっそりと置かれた、小さなテーブルとチェアのセット。周りの華やかなインテリアとは雰囲気が異なり、飾り気がありません。しかし、不思議と寂しさは感じず、むしろ心がふっとほどけるような安心感があります。「豪華絢爛の中にある、ちいさな“素”」。それが姉妹の築いたライフスタイルを物語っているようでした。お互いの時間と世界観を尊重しながら暮らしていた様子が空間の隅々から感じ取ることができ、ただ豪華な住まいではなく“贅沢と親密さ”が共鳴する空間でした。

今年も開催!ミラノサローネセミナー2025

以上が筆者が注目した2025年のトレンド情報でした。
今回ご紹介した内容以外にも見逃せないトレンドや、今後の兆しが沢山あります。
本トピックの続きはぜひ、6月3日(火)16:00〜 公益社団法人日本マーケティング協会のマーケティングセミナーにご参加し、理解を深めてみてください。
毎年恒例のCMF+P調査や、第一線で活躍するデザイナーへのインタビューなど、サローネを知り尽くすことができるコンテンツをご準備しております。ぜひこの機会にお見逃しなく!
下記より詳細のご確認と申し込みが可能です、皆様のご参加をこころよりお待ちしております。

Contact

デザイン課題を気軽に相談

無料カウンセリング実施中!

お問い合わせはこちらから